あなたは将来、住宅についてどのようにお考えでしょうか。
- ご両親から引き継いだ物件を次の世代にもまた引き継ごうとお考えの方
- 転勤等に備えて家を買わず、今後も賃貸で生活される方
- とりあえず現在の生活を維持しようとお考えの方
様々な考えの方がいらっしゃると思います。
今回は将来に住宅やマンションを購入しようとお考えの方向けに「住宅購入にかかる諸費用は一体いくらなのか」を解説していきたいと思います。
住宅購入の際の諸費用について
住宅購入には様々な費用がかかります。
住宅購入に関するコストは
- 物件周りの費用
- ローン関係の費用
の2つに分けられます。
種類が多く複雑なため、細分化しつつ順番に解説していきます。
( 1 )物件周りの費用
まずは物件を購入する際にかかる費用の種類を一通り紹介していきます。
頭金
頭金とは住宅そのものの費用から住宅ローンを引いた金額のこと
頭金ゼロでも購入できる住宅はありますが、基本的には頭金をいくらか支払って購入する方が多いです。
その理由の一つに「金利」の問題があります。
例えば3000万円の物件を購入する場合、頭金で500万円を支払う場合と、頭金ゼロで購入した場合だと35年間で約130万円の差が生まれてしまうのです(固定金利1.4%の場合)。
一方で頭金を払いすぎても現在の生活が逼迫してしまうこともあります。
ですので住宅の価格の10〜20%を頭金として支払うのが目安であると考えておくのが良いでしょう。
また、後ほど紹介するのですが、住宅の購入には諸経費がかなりかかってしまいます。
諸経費を計算せずに頭金の額を決めてしまうと、想像よりも購入時の負担が大きくなってしまうので、総合的な出費額を計算した上で頭金を決める必要があるでしょう。
頭金を用意することで、ローンの金利を下げることができるのはもちろんですが、そもそもの「ローンの審査に通るかどうか」という問題も解決してくれます。
無理のない程度で、可能な限り多くの頭金を用意するのも、住宅購入の際のポイントとなります。
手付金
手付金は、「契約成立時に買い主から売り主に支払われるもの」であり、代金決済時に購入代金に充当されます。
手付金は物件価格の5〜10%前後で、不動産会社が売主となる場合は物件価格の20%以上の手付金を受け取ることは法律で禁じられています。
手付金の法的拘束力について
手付金には法的拘束力があり、「宅地建物取引業法」により効力が保証されています。
手付金を支払う=契約成立なので、その後のキャンセルは解約という扱いになります。
買主の事情での解約は手付金を解約金として扱うため、買主には戻りません。
一方、売主事情での解約の場合は、手付金の2倍の額を買主に支払う必要があります。
登録免許税
登録免許税とは、不動産が自分の所有物であると登記するのにかかる国税で、法務局に対して支払う手数料と考えるとわかりやすいです。
不動産を購入する際に発生する登録免許税には
- 所有権移転登記
- 新築建物の保存登記
- 抵当権設定登記
の3種類があるので、簡単に解説します。
そもそも登記は実は不動産購入にあたって義務化はされていないのですが、住宅の所有権を公的に証明したり第三者による不法占拠などのトラブルに対抗できるので、ほとんどの人が不動産登記を行います。
1. 所有権移転登記
所有権移転登記は、登記簿謄本というその不動産の所有者や権利関係などについて書いてあるもので、そちらの所有者を売主から買主に移転する際に必要な登記です。主に土地の売買や中古住宅の取引の際に行われます。
2. 保存登記
保存登記とは、その不動産に対して初めて行われる所有権登記で、注文住宅などの初めて所有権が設定される新築建物では保存登記が行われます。
3. 抵当権設定登記
抵当権設定登記は、住宅ローンを借りて住宅を購入する場合のみに必要な登記のことです。
そもそも抵当権とは、債権者がその物件から優先的に弁済を受けることができる権利で、住宅ローンを借りる際には抵当権設定が必要で、抵当権設定登記費用がかかります。
金額の目安としては固定資産税評価額×税率で計算され、所有権移転が2%(土地は1.5%)、保存登記と抵当権設定登記が0.4%です(軽減税率有)。
不動産取得税
不動産取得税は、不動産を取得した際に発生する地方税で、固定資産税評価額の3%又は4%ですが、一定の条件を満たす住宅の場合は0円になる場合もあります。
司法書士報酬
不動産の登記をする際には、登記を代行してもらう司法書士への報酬手数料などもかかります。
手数料には規定はなく、自由化されているのですが、おおよその相場は5〜10万円ほどです(登録免許税は別途必要)。
これは司法書士によって大きく変動する部分なので、詳細を確認するために見積書の提出を求めることをオススメします。
固定資産税・都市計画税
土地・建物などのいわゆる固定資産を保持していると支払い義務が発生する税金を固定資産税と呼びます。
課税額は固定資産課税台帳という台帳に記載されている価格の1.4%ほどで、毎年1月1日時点でその固定資産を保有している人に納税義務が発生します。
一方で都市計画税は、都市計画法によって定められた市街化区域内にある土地と建物が課税対象となり、税率は0.3%です。
また、都市計画税と固定資産税の両方の課税対象となる不動産を保有している人には、都市計画税は固定資産税とまとめて請求されます。
固定資産税精算金
固定資産税精算金とは、固定資産の引き渡し以降の分の固定資産税を日割りで計算し、引き渡し当日以降の分を買主が支払う費用です。
また、税法上は税金の支払いではなく、売買の代金とみなされます。
修繕積立基金
修復積立基金は、新築のマンションを購入する際に請求される費用で、一軒家を購入する際や、中古マンションの購入時には発生しません。
通常、引き渡し時に支払われることが一般的で、集められた基金はマンションを長く快適な状態に保つために行われる10〜20年毎の改修工事等に用いられます。
金額はエリアや物件の規模、建物の構造や広さによって変わりますが、20〜40万円程度が一般的とされています。
仲介手数料
仲介手数料は、住宅を探す際に不動産会社に仲介してもらった場合のみに支払います。
多くの住宅購入が不動産会社を介して行われるので、仲介手数料は発生するものと考えておいた方がいいでしょう。
実際手数料がいくらかかるかについてですが、取引される不動産が、
- 200万円以下の場合:5%
- 200〜400万円の場合:4%+2万円
- 400万超の場合:3%+6万円
です。
( 2 )ローン関連の費用
これまでは物件周りの費用について見てきましたが、ここからはローン関係のコストについて紹介していきます。
その前に、まずは住宅ローンについて復習しておきましょう。
住宅ローンについておさらい
まずは住宅ローンローンの金利には3種類あります。
①固定金利型
金利が固定で、返済開始から完済まで金利が変わらないのが特徴です。
返済額の変動も当然無いので、家計管理がしやすく、返済計画が立てやすいのもポイントです。
②変動金利型
こちらは返済期間中、定期的に金利の見直しが行われるタイプのローンです。
市場金利の上がり下がりによって返済額も変動します。
年2回金利が見直されるのが一般的ですが、返済する金額自体は5年に1度見直されます。
また、金利が上昇して返済額が増加する場合でも最大で1.25倍までという上限が設定されているものも多く、こういったケースでは、当初の額より大幅に返済額が増加する心配はありません。
③固定金利期間選択型
こちらは返済開始後の一定期間は固定金利型で返済し、それ以降は自動的に変動金利型に移行するローンです。
固定金利期間が終了した際に固定金利制を継続できるパターンもあり、金融機関によって多少制度が異なります。
まだローンの話が続きます….
続いて、ここからは住宅ローンの借入先の種類についてご紹介します。
住宅ローンは大きく分けて公的と民間の2種類があるのですが、ローンのお話をするにあたってこれらを更に細分化して解説することは必須なので、ここからは細かいローンの種類について見ておきましょう。
公的融資について
まずは公的融資について見ていきます。
公的融資とは、自治体や独立行政法人が行う融資のことです。
公的融資は財形持家転貸融資・財形住宅融資と自治体融資に分けられます。
財形持家転貸融資・財形住宅融資
財形持家転貸融資・財形住宅融資はサラリーマンも利用できる公的融資の代表格で、財形持家転貸融資は独立行政法人勤労者退職金共済機構が、財形住宅融資は独立行政法人住宅金融支援機構の管轄にあります。
利用条件として財形貯金が1年以上50万円以上ある、などがありますが、多くの人が利用できる代表的な公的融資の一つです。
民間融資について
ここからは民間融資についての解説をしていきます。
民間融資とは、文字通り民間金融機関が行う融資で、「民間金融機関」とは、主に銀行や信用金庫のことを指します。
不動産会社やハウスメーカーと金融機関が提携して提供されているものは提携住宅ローンなどと呼ばれます。
複数の住宅ローンを比較検討することが、可能な限り費用を安く抑えるポイントになります。
『フラット35』について
各民間金融機関と独立行政法人住宅金融支援機構が提携して提供する住宅ローンのフラット35です。
フラット35はその名の通り、金利が最長35年間変更されないのが特徴です。
利用条件の一つに、購入する住宅が機構の定める技術基準を満たしている必要があります。
そのためには「適合証明書」の発行を受け、適合証明機関や適合証明技術者が建物の立ち入り、住宅が建築基準法の基準を満たしているかどうか検査を行う必要があります。
『フラット35S』について
また、フラット35Sという制度もあります。
こちらは「耐震性」「省エネルギー性」「バリアフリー性」「耐久性」「可変性」のいずれかの性能がより高い技術基準を満たす住宅において、フラット35の借入金利を一定行っての期間下げることができる制度です。
金利の引き下げは金利Aプラン、Bプランとあり、Aプランの基準を満たした住宅は返済開始から10年間Bプランの条件を満たした住宅は5年間、年間0.25%の金利引下げを受けることができます。
AプランとBプランの違いは、求められる住宅基準のレベルで、金利引き下げ期間が長いAプランの方がより高い技術基準を求められます。
長くなりましたが住宅ローンに関する補足はここまでです。以後は住宅ローン周りに関する説明に進みます。
印紙税
まずは印紙税です。
印紙税とは「印紙税法」という法律によって定められた課税文書に対して課税される税金で、不動産取引に関係するものも複数あります。
住宅購入時に必要な不動産売買契約書はもちろん、住宅ローンを利用する場合は金銭消費貸借契約書が、注文住宅を立てる場合には建築工事請負契約書がそれぞれ必要で、これらは全て課税文書です。
例えば、「住宅ローンを使用して」「注文住宅以外の不動産を購入する」場合は、不動産売買契約書と金銭消費貸借契約書の発行が必要となり、それぞれ課税されます。
印紙税の税率は契約書などに記載された金額に応じて変わります。
100万円を超え500万円以下のものの場合は2000円、500万円以上1000万円以下のものは1万円、1000万円から5000万円のものは2万円、5000万円から1億円以下のものは6万円(軽減措置有)。
融資手数料
融資手数料は、これは住宅ローンを借りる際に金融機関に対して支払う手数料のことで、「保証会社手数料」と呼ばれることもあります。
あらかじめ設定される場合もあり、ほとんどの場合が3〜5万円ですが、ネット銀行などの場合は2.16%に設定されているものも多いです。
斡旋手数料
斡旋手数料は住宅ローン代行手数料とも呼ばれ、不動産会社に住宅ローンの手続きを代行してもらう際にかかる費用。
相場は3万円〜数10万円と幅があります。
ただこれは必ず払わなければいけないわけではなく、そもそも住宅ローンの手続きは、住宅ローンの申し込みに必要な書類を揃えて銀行などの金融機関に提出するだけです。
よほど「忙しくて寝る暇もない」ほど多忙な人でない限り、ご自身で手続きすることをオススメします。
不動産会社の営業マンは「うちの会社に任せると審査が通りやすい」と言うかもしれませんが、実はどこの不動産会社に頼もうが審査には影響しないのです。
銀行はあなたの年収や勤続年数などを勘案して審査します。不動産会社が大きいかどうかは関係ありません。
あなたが自分で手続きをしてしまっては手数料を貰えないので、不動産会社は代行依頼を強く勧めてくるかもしれませんが、銀行で十分詳しくローンについて聞くこともできます。極力、ご自身で手続きすることをオススメします。
火災保険・地震保険
次に、火災保険と地震保険です。
火災保険
火災保険料は建物(不動産)とその建物にある家具などの動産を補償する保険です。
「火災」というフレーズがあるため火事での被害のみ対象になると思われがちですが、下記のようなでも適用されます。
- 落雷
- 雨漏り
- 盗難
- など。
地震保険
加えて地震保険は、火災保険では補償できない以下のような損害を網羅した保険になります。
- 地震
- 噴火
- 津波
そのため法律で火災保険とセットでの加入が義務付けられています。
保証内容の種類が多いのもあり、相場が15〜40万円ほどと幅があるのですが、地震保険料はほとんが保証金額1000万円あたり1〜3万円ほどが相場です。
団体信用生命保険料
団体信用生命保険料は住宅ローンの返済に関する保険です。
つまり住宅ローン契約者が死亡してしまったなど、返済できなくなった際に、保険会社が費用を代行するというもの。
ほとんどの場合金利に上乗せされています(+0.2%前後)。
住宅ローン保証料
住宅ローン保証料とは、保証会社に保証人になってもらう際に発生する費用です。
もし不測の事態が起こり、債務者がローンを支払うことが不可能になった場合、保証会社がローン会社に弁済を行ってくれます。
金利に上乗せするパターンと一括払いのパターンがあり、負担額としては、例えば35年の返済期間で1000万円の融資を受ける場合、20万円ほどかかります。
3000万円以上の場合は60万円ほどかかり、住宅ローンの諸費用の中で最も高いのがこのローン保証料です。
水道負担金
水道負担金とは、新たに水道を設置する場合や、既存の水道の口径を増やす場合に水道局に支払うものです。
自治体や給水区域によって金額が大きく異なり、その幅は3万円から100万円と、かなり振り幅があります。
また、支払わなくても良い場合も多いので、一度事前に確認することをオススメします。
まとめ
長くなってしまいましたが、様々な種類の手数料がかかる上に、手続きもそれぞれ大変なことがわかります。
1つ1つを完璧に理解する必要はありませんが、斡旋手数料のように知っておくことで削減できる費用もあるので、この記事が少しでも費用を抑える役に立てば幸いです。